第12夜 梶尾真治「おもいでエマノン」 (小説)

ガンパレから星雲賞つながりでエマノンシリーズを紹介します。
10月の新刊に「かりそめエマノン」が出ていますが、シリーズものとして考えるとやはり「おもいでエマノン」から紹介したほうが良いかと思います。

私は徳間デュアル文庫で初めて梶尾真治という作家を知ったのですが、著作は短編が多いです。
1979年「地球はプレイン・ヨーグルト」、1992年「恐竜ラウレンティスの幻視」、2001年「あしびきデイドリーム」で星雲賞短編部門を受賞ということで、世間的にも短編の評価は高いようです。
長編では「サラマンダー殲滅」が日本SF大賞を受賞しているらしいですが、未読なのでノーコメント。

で、「おもいでエマノン」です。
徳間デュアル版は上に挙げた「あしびきデイドリーム」を含めて8作の短編が収録されています。
地球に生命が発生してから現在までのことを全て記憶している少女、エマノンの冒険を綴ったものですが、私は本筋は表題作「おもいでエマノン」だけであり、他は全てサイドストーリーであると思っています。
巻末対談でも作者本人が「おもいでエマノン」はあれで完結しているので続きを書くつもりはなかった、と言っていますし。

「数時間一緒にいても、数十年間一緒にいても同じことなのよ」

梶尾SFの中でもっとも大切なものは“おもいで”のようです。
それだけに生命の誕生から全ての記憶=おもいでを持つエマノンに課された使命は大きいわけですが、同時におもいでによって彼女が癒されるというのがエマノンシリーズの基本的なパターンであり、それがもっとも集約されているのが「おもいでエマノン」なのだと思います。


文責:柚木千夜

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